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1995年度(平成7年度) | 資料集 | 大分県産業科学技術センター

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(1)

超音波探傷法による鋳鉄材料の評価技術に関する研究

吉浦洋之*。高橋芳朗*・下郡貴久**・佐藤繁文***・清水一道****

*材料開発部。**新日本非破壊検査(株)。***(株)工藤製作所・****国立大分工業高等専門学校

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要旨

非破壊試験の中で鋳鉄製品に対してよく用いられている超音波探傷検査は機械的性質の判定,欠陥検査の両方

を行うことができ,しかも迅速で安全性が高く,製品全体の評価を行うことができる.そこで本研究では,鋳鉄

製品の超音波速度の測定により,鋳鉄の引張強度と基地組織の影響について調査し,実際の製品に適用可能かを

検討した結果,片状黒鉛鋳鉄の引張強度と硬さには密接な相関関係がみられタ 引張強度と超音波速度についても

同様の結果が得られた。また,球状黒鉛鋳鉄の引張強度と硬さには密接な相関関係が得られたが,引張強度と超

音波速度の関係では高い超音波速度域で引張強度がばらついた.鋳鉄の引張強度と超音波速度との関係について

考察した結果,次の結論を得た.1)鋳鉄の音速は黒鉛組織に敏感に反応した− 2)片状黒鉛鋳鉄では超音波速

度測定で引張強度の推定が可能である.

1 緒言

地球環境保全,エネルギー問題等の観点から素形材の

軽量化が強く要求ざれる今日において,鋳造品特有の複

雑形状付与性が見直されつつある.特に球状黒鉛鋳鉄は

鋼材並の高強度特性を利用した薄肉軽量化指向が進み,

また,鍛造品等の軽量代替品としての利用が進んでいる.

更にき 鋳鉄の材質高級化あるいは品質安定化技術の向上

によりき 鋳鉄材料への信頼性は最近高まりをみせている。

鋳鉄材料の品質を保証する手段として非破壊言式験を行

うケースが増えてきており,非破壊試験の中で鋳鉄製品

に対してよく用いられているのは超音波探傷試験,放射

線透過試験,浸透探傷試験であるがタ 超音波探傷試験の

ように機械的性質の判定,欠陥検査の両方を行えるもの

はない。また他方法に比べて迅速でしかも安全性が高く

製品全体の評価を行うことができる.しかしながら,片

状黒鉛鋳鉄では引張強さが弱くなると超音波減衰により

機械的性質等の評価が困難になる性質をもっている,そ

こで本研究では大分県内の鋳造企業の実態調査を兼ね∼

各社より成分の異なる実験材料を提供してもらい,超音

波探傷法を利用して鋳鉄製品の超音波速度を測定し,鋳

鉄の弓F張強度と基地組織の影響について調査し,実瞭の

製品に適用可能かを検討した.

2 実験方法

2.1試験片

片状黒鉛鋳鉄は直径約30mm,長さ約500mmの砂型で作

られた鋳放し材を用い抗折試験を行った9訝i g.且に抗折

試験片の略図を示す.

球状黒鉛鋳鉄の場合は各社ごとに採取方法が異なり,

ノックオフ形供試材} Y型供試材の2通りで採取を行っ

たd F畳ま。2に球状黒鉛鋳鉄の採取方法の略図を示す。

片状黒鉛鋳鉄,球状黒鉛鋳鉄をそれぞれ8号試験片,

4号試験片に機械加工し引張試験を行った.引張試験片

の略図をざ瞳.3に示す.

引張試験終了後,硬さ試験,超音波試験,組織観察を

行うための試験片を引張試験片より切り出した。

各種の試験片の採取方法の略図をぎ垣.塵に示す.

化学分析は各鋳造企業より提供された全51試料のう

ちi 7試料について行い,機械加工を行う際に発生する

破片を採取し分析を行った9 化学分析の結果をT盈b凰e且

に示す.なおA∼H

は片状黒鉛鋳鉄,Ⅰ∼Q

は球状黒鉛

鋳鉄を表し,D∼Fはキュポラ溶製材であり,他の試料

は電気炉溶製材である.また,球状黒鉛鋳鉄のうち0は

ノックオフ型供試材より,他のものはY型供試材より採

(2)

平成7年虔 研究報告 大分県産業科学技術センター

TabI el Chem血1c ompos i t i on maBS%

C Si Mn S P Mg Cr A 3.75 2.18 0。506 0.0411 0。0683

B 3.83 2.38 0。474 0.0389 0.0625

C 4.10 1.57 0.535 0.0245 0.0256

D 3.77 1.97 0.580 0.107 0.0996

E 3.41 1.99 0.624 0.104 0.0766 0−678

F 4.15 1.54 0.525 0.140 0.208

G 3.35 1.98 0.565 0.138 0.163 H 3,37 2.14 0.833 0.0216 0.0556

Ⅰ 3。61 1.94 08207 0。00906 0.0694 0。0382

J 3.51 2.02 0.387 0.00643 0.0521 0.0369

K 3.99 1.99 0.389 0.0146 0.0675 0.0428

L 3.95 2.40 0.776 0.0149 0.0674 0.0432

M 3.71 3.00 0.590 0.0169 0.0320 0。0293 N 3.88 1.99 0.530 0.0347 0.0548 0.0286

0 4.02 2.69 0.420 0.0170 0.0176 0.0483

P 3−63 3,21 0.314 0.0231 0。0185 0.0442

Q 3.66 3.01 0。485 0.0221 0.0211 0.0485

A∼H

:FC,Ⅰ∼Q

:FCD

,D

∼F:キュポラ溶製材,0:ノックオフ型供試材

F短.1抗折試験片

a 4号試験片

b 8号試験片

ぎ短.3 引張試験片

2.2 超音波法

2.2.1超音波の発生と受信の方法

ぎ皇g.5に超音波発生の原理の略図を示す.図に示すよ

うに超音波は圧電効果を示す振動子にパルス電圧を加え

ることにより発生させる1).この振動子に数回の繰り返

しのパルス電圧を加えると振動子に数回の繰り返し数の

パルス振動が発生する。振動子を試験体にあてると試験

体表面にこの振動が伝わりタ 超音波となって試験体中に

伝わる。試験体中を伝わる超音波が欠陥又は試験体の裏

面で反射してきて,再び,試験体表面に戻って来ると,

試験体表面が振動する.この振動により振動子が伸縮振

動し,電圧を発生させる− 発生した電圧をブラウン管上

で,縦振れの信号として表示させ,エコーと呼んで観察

に利用している。今回の実験で使用した振動子は

5MHz のジルコンチタン酸鉛である. a ノックオフ形供試材

亡†︻

ト」

b Y型供試材

F短.2球状黒鉛鋳鉄採取方法

Å:硬さ試験用

B:超音波試験用,金属線織観察用

Fi g.4各種試験片採取方法

(3)

(1)の組織は一部バラ状のB型黒鉛であり ,黒鉛形

状も直線的に長く伸びており,弓ほ最強度も200N/mm2以下

と弱く,硬度も低く,フェライトも20%程度表れてい

ることから,超音波の音速も低い結果となっている2).

(2)の組織写真では,一部A型黒鉛又はC型黒鉛が

析出し,基地もフェライトが少ないため引張強度が

200N/皿2以上,プリネル硬さも200近い値を示しているこ

とから音速も(1)と比較すると高い値を示している℡

(3)の組織写真は,黒鉛形状も細かく,Å型黒鉛又

は,C型黒鉛が析出し,強度,硬さとも(2)と比較し

て高い値を示し,同時に音速も高い値を示している,片

状黒鉛鋳鉄の組織は暗黒色の層状パーライト基地に黒色

の片状黒鉛が散在し,黒鉛の形状が細かくなるにつれ引

張強度,硬さとも増大する傾向にある3)

刑&郎こ片状黒鉛鋳鉄の引張強度と硬さの関係を示す.

引張強度が100N/m皿2から350N/m皿2までの強度に対する硬

さの関係では若干ばらつきはあるものの,ほぼ直線的な

相関関係にある。Fi g.9に引張強度と超音波速度の関係

を示す.この図からも強度と音速とは直線的な相関関係

にあることから,硬度と音速も直線的な相関関係にある

ことが言える.

片状黒鉛鋳鉄には引張強度と硬さには密接な相関関係

がみられ,また,引張強度と超音波速度についても同様

の結果を得ることができた.

3.2 球状黒鉛鋳鉄

F短.ま0は球状黒鉛鋳鉄の顕微鏡組織写真の代表例に

ついて示す.

(1)はフェライト型でき 黒鉛の形状も大小とばらつ

いており,一部,球状化不良及び片状黒鉛も析出してい

る,この組織的強度も370N/皿2と低く,音速も5300m/s 台

と低い.

(2)はフェライト及び一部ブルースアイ型で黒鉛粒

径もばらつきが少なく安定しているため,引張強度も

500N/mm2とやや高く硬度き 音速とも高い値を示している.

(3)はブルースアイとパーライトの混合組織であり,

粒径は不揃いであるが,黒鉛形状はばらつきが少なくむ

基地がほとんどパーライトであるため強度も高く硬度,

音速共に高い値を示す.このことから基地によって機械

的強度は向上し〉 同時に硬さ,音速共に向上する4)。上

記の球状黒鉛鋳鉄の組織は球状黒鉛がパーライトとフェ

ライトからなる基地に散在する組織である,フェライト

の面積率が小さくなる程強度が増大するが伸びは低くな

る.Fi g。且1は,球状黒鉛鋳鉄の引張強度と硬さとの関

係を示したものである.この図からタ 強度と硬さとの問

には密接な相関が認められる.ぎi 宮島且2は球状黒鉛鋳鉄の

引張強度と音速との関係を示したものである.この図か F短5 超音波発生の原理

2.2.2 超音波採傷法

超音波探傷試験に用いられる超音波にはパルス波が広

く利用されておりタ 数〟秒程度の短い時間内の振動を試

験体に送り込んでいる.超音波は空気のような気体中だ

けでなく,水のような液体中でも伝搬する.また,金属

などの固体中では粒子の振動は弾性波として伝搬し,周

波数が1∼10M

H

z 程度になると,超音波はあまり広

がらずに特定の方向に細いビームとなって伝搬し,小さ

なきずでも反射しやすくなる。このような超音波の性質

を利用て金属などの試験体中のきずを検出する.

2。2,3 超音波速度測定装置

超音波速度測定装置は,超音波探傷器,球状化率測定

装置,測長台から構成されている.球状化率測定装置は

超音波を利用してj 球状黒鉛鋳鉄の黒鉛球状化率を測定

する装置であり,超音波探傷器と組み合わせて使用した.

測長台の略図をF短.6に示す.

試験片を測長台にセットすることにより試験片の長さ

が測定され,同時に超音波探触子内にある振動子より超

音波パルスが送信される。超音波パルスを送り込んだ瞬

間から超音波パルスを受信した瞬間までの経過時間と,

試験片の長さより超音波速度が求められる匂

F短.6 測長台略図

3 実験結果及び考察

3.1片状黒鉛鋳鉄

F短。7は片状黒鉛鋳鉄の顕微鏡組織写真の代表例につ

(4)

平成7年虔 研究報告 大分県産業科学技術センター

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(1)す迅巴1鮨.珊血m2 ⅡB=1飴 Ⅴ芝劇胤如

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F短t l ¢ 球状黒鉛鋳鉄の顕微鏡写真 F短.冒 片状黒鉛鋳鉄の顕微鏡写真

(5)

0 0 0 0 5 0 3 2 2 √∈∈\ Z

︶島じ巴︸

S

S U β 0 0 0 5 3 2 √∈∈\ Z

︶壬ぎ

2

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S

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1 U ︻∪ 5 0 1 1 1 0 0 5 0 1 .

.■−■一

0 60 120 180 240 300 Har dnes s (HB)

ぎ短.さ 引張強度と硬さの関係(FC)

FCD

3200 3600 4000 4400 4800

∪酔as oni cve!oc盲吋(m/S)

ぎ短t 9 引張強度と超音波速度の関係(FC)

FCD

8

0

⊂) ∴

0 0

0

√∈長邑亀

u

g

s

空曹揮

︵∼∈∈\

N

︶急こ選

S

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0 0 0 0 3 2

0 80 160 240 320 Har dnes s (HB)

400

5000 5200 5・100 5600 5800 6000

Ui t r as oni cve10Ci t y(m/s )

ぎ恕.且2 引張強度と超音波速度の関係(FCD) ぎ短.且且 引張強度と硬きの関係(FCD)

︵〓︶

0

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﹁=

㌃∈長

Z

︶エ︸ぎ苫

S

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U

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U 0 0 0 ︵ U 4 2 0

0 50100150 200 250 300

Har dnes s (HB)

3000 3500 4000 4500 5000 5500 6000

Ul t 「as onj c ve【oci t y(m/′s )

ぎ短.五4 引張強度と超音波速度の関係(FC。FCD)

(6)

平成7年虔 研究報告 大分県産業科学技術センター

らは,ぱらつきが大きくはっきりとした相関は認められ

ないが,引張強度が500N/皿2以下とそれ以上とに分類す

ることができる.弓ほ長強度が高い超音波速度域でばらつ

いた理由として,球状黒鉛鋳鉄の場合は試験片の採取方

法が各社ごとに異なっており,Tabkl で示したとおり化

学成分も一様でないことから,基地組織や球状黒鉛の球

状化率5大きさのばらつきにより生じたものと考えられ

る.また,各社ごとにばらつきの範囲が異なっており,

例を挙げると,ざまg.12で示した引張強度と超音波速度

の関係で.引張強度が700N/皿m2以上の3つの試験材は同

じ会社のものである.先に挙げた高い超音波速度域とい

うのは約5600m/s 以上の領域でこれは黒鉛の球状化率が

80%以上の合格範囲にあたる5)・片状黒鉛鋳鉄,球状黒鉛

鋳鉄双方の引張強度と硬さの関係をFi g.13に,引張強

度と超音波速度の関係をFi g。14に示す.ぎi g.13では片

状黒鉛鋳鉄,球状黒鉛鋳鉄双方に引張強度と硬さの関係

に相関性があることが確認でき,ざまg.鼠4では超音波速

度が約5600m/s 以上で引張強度がばらついていることが

認められ,それ以下の超音波速度では相関性のあること

が確認できる.

4 緒言

超音波探傷法を利用して鋳鉄の弓ほ長強度と超音波速度

との関係について考察した結果,次の結論を得た.

1)片状黒鉛鋳鉄.球状黒鉛鋳鉄双方の超音波速度は,

黒鉛組織に敏感に反応した。特に,片状黒鉛鋳鉄は黒鉛

形状に,球状黒鉛鋳鉄は基地組織により超音波速度が影

響を受けている.

2)片状黒鉛鋳鉄では,超音波速度の測定により引張強

度の推定が可能であるe しかし,球状黒鉛鋳鉄では超音

波速度と引張強度の関係(Fi g.風神こ示すとおり,ばら

つきが大きくタ超音波速度が約5600m/s 以上では引張強度

を推定することができなかった.

今回の研究にあたり,試験片の提供をして頂いた,

木本機器工業(株),(株)八幡ハイキヤスト,(有)豊

国鋳造工業所,オダ工業(株),(有)竹下鋳造所の皆様

に深く感謝の意を表します。

参考文献

1)(社)日本非破壊検査協会:超音波探傷試験(1990)

2)吉浦洋之:昭和57年慶大分県工業試験場業矛男年報

球状黒鉛鋳鉄の高延性に関する研究(1972)

3)(社)日本非破壊検査協会:非破壊検査技術者のため

の金属材料概論(1986)

4)(社)日本非破壊検査協会:非破壊検査技術の標準化

−144−

に関する調査研究平成3年度 調査報告書(1992)

5)(有)日下レアメタル研究所:ⅩUS膿A TECKN王C瓜NEW

TabI el Chem 血1c om pos i t i on    m aBS%

参照

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